法規制概要   

1.金融商品取引法上のPTS 

1998年の金融システム改革において、PTSが法律上、規程されました。
また、2000年12月に旧証取法第80条(金商法第80条)は、市場の開設にあたって免許が必要な者と、免許なしに認可で開設できる者とに分けて定義しています。この規定の施行に際し、金融庁では、開設する市場の内容の中で、証券業の中の一つとして行える範囲と取引所として免許を受けて初めて行える範囲とを確定するという作業を行い、それらをとりまとめて「私設取引システム(PTS)開設等に係る指針」を策定しました(2000年11月16日)。
同時に、市場価格売買方式と顧客間交渉方式の2種類が追加されました。
さらに、2005年4月に、PTSでもオークション方式が認められることとなりました。これにより、PTSと取引所は、売買方式の違いはなくなり、取引量による区別のみとなり、価格形成機能による違いだけとなりました。
なお、取引所と同じ売買方式であるオークション方式では、他の売買方式とは別に以下のような数値基準が設けられています。

【オークション方式における数値基準】

次の基準を超えた場合には、金融商品市場開設の免許取得が必要となる。

  •  過去6ヶ月間にオークション方式によって行われた上場有価証券等の売買に係る総取引高の1営業日当たりの平均額が、当該6ヶ月間に行われた上場有価証券等の取引所金融商品市場等における売買に係る総取引高の1営業日当たりの平均額に対する比率が1%であること。

  •  過去6ヶ月間にオークション方式によって行われた上場有価証券等の各銘柄の売買に係る総取引高の1営業日当たりの平均額が、当該六月間に行われた当該銘柄のすべての取引所金融商品市場等における売買に係る総取引高の一営業日当たりの平均額に対する比率が10%であること。

この指針を策定した趣旨は、ITの技術を駆使して約定成立能力が非常に高まったPTSという新たな形態の証券業の展開が見受けられるようになり、こうした電子取引市場開設の動きは市場間競争を通じて有価証券市場全体の効率性を向上させるとともに、流動性の低い有価証券の流通市場を整備すること等により、投資者の利便性の向上に寄与することを期待しつつ、一方で、こうした新たな形態の証券業については公正な取引の確保、投資家保護の観点から、従来の伝統的な証券業には想定されなかったような問題がいろいろあるのではないかという考え方の下、投資者保護等の観点を踏まえた有価証券取引の電子化に資する環境整備を進めるところにあるものと思われます。

  金融商品取引法等の抜粋

2.PTSの指針:認可の条件 

PTSの世界では、証券取引所ではないところで金融商品取引所の板のような機能を有するものがインターネット上や専用端末上に出現することになります。このため、証券会社が1対1の形(証券会社店頭、電話等)での投資家との取引といった伝統的な証券業を前提としたルールのままでは、公正な取引の確保や投資家保護の観点からは不十分な内容になってしまいます。つまり、取引の形態がさまざまに変わってくるということになるので、新しい形態に応じたルールが必要になるということになります。

 PTS業務は認可制となっていますので、PTSとして認められる業務の範囲が変わるとともに、認可の条件の見直しも必要となってきます。 具体的には、以下のようなものです。

(1) 売買価格の決定方法
まず、PTS業務における売買価格の決定方法が拡充されました。2000年11月の指針の策定において、証取法上で規定されていた市場価格売買方式と顧客間交渉方式に加えて、顧客注文対当方式と売買気配提示方式の2つの方法が追加されました。

(2) 公正取引の確保の為のルールの整備
自主規制機能を有しない証券会社がPTS業務において一定の価格形成機能が認められることになったことにより、公正な取引の確保や投資家保護の観点で問題が生ずることがないよう、価格情報等の外部公表と取引高シェアに基づく数量基準に関するルールが、株券等とそれ以外の債券等のそれぞれについて設定されました。

@ 価格情報等の外部公表
PTS業務を含めた取引所金融商品市場外取引において公正な取引を確保する上では、その価格形成が公正かつ透明に行われる必要があり、そのためには価格情報の報告・集中・公表が不可欠な要素となります。

このため、PTS業務(この@では、株券等を取り扱うものに限られています。)について、そのPTSでの最良気配や取引価格等を他のPTSと比較可能な形で即時に外部公表することが義務付けられ、これがPTS業務の認可の条件とされました。

新しいPTSという形態が登場し、その在り方は今後も変容していくことが考えられます。さまざまな取引手法、中には非常に複雑な取引手法を有するPTSが登場することが予想される一方で、機関投資家や証券会社はもとより個人投資家が参加するPTSも出てくるものと思われます。そのときに、自分の注文がどのような価格で付け合わされるのか、それが有利な価格なのか不利な価格なのかといった状況が投資家にある程度見えてしかるべきだということです。そこで、米国におけるNMS(National Market System)の議論もあるように、取引の公正性や投資家保護を確保するためには、他のPTSと一覧性のある形での価格情報等の外部公表が必要だとされたのです。

具体的には、気配や取引価格等を他のPTSと比較できるような形で、リアルタイムで外部から自由にアクセスすることが可能な方法により公表する形態となっていることが求められています。

この要件は、PTS自らが他のPTSから価格情報等を入手して比較可能な形で外部公表したり、情報ベンダー等に各PTSの価格情報等を収集・外部公表してもらうことで満たすことが可能であると考えられます。その一方で、これらの要件を満たすPTSの価格情報等を公表するシステムを、当時、証券取引所上場銘柄の取引所外取引及び店頭上場銘柄全般の売買について管理・規制している日本証券業協会において構築して欲しい旨の要請が金融庁からあり、これを受けて日本証券業協会が本PTS価格情報等公表システムを構築し運営するに至っています。

A 取引高シェアに基づく数量基準の導入
自主規制機能を有しない証券会社に対し、PTS業務において一定の価格形成機能を認めた結果、そのPTSの取引参加者が増加して規模(取引高シェア)が一定以上に拡大した場合には、公正な取引の確保の面で問題が生じるおそれが大きくなるとともに、主たる市場である取引所金融商品市場や店頭市場での流動性を低下させ、公正な価格形成を阻害するおそれも生じます。

従って、金融商品取引所上場銘柄及び店頭上場銘柄を取り扱うPTS業務について、取引高シェアが一定水準を超える場合にはそれに基づいて一定の措置を講ずることが義務付けられ、これが認可の条件とされています。

具体的には、取引所金融商品市場又は店頭市場に上場されている株券又は新株予約権付社債券を対象とするPTSが次に掲げる条件に合致した場合には、それぞれに掲げる措置を講ずることとされました。

□ 過去6ヶ月において、取引所金融商品市場又は店頭市場に上場されている株券又は新株予約権付社債券の「PTSにおける一日平均売買代金」の「東証・大証・名証・店頭市場における売買代金の合計額」に対する比率が、個別銘柄いずれかについて10%以上、かつ、そのPTSで取り扱う銘柄全体について5%以上となった場合には、次の措置を講ずること。

  •  取引の公正性を確保するため、売買管理及び審査を行う体制(組織及び人員)を拡充・整備すること。

  •  決済履行の確実性を確保するため、証券取引所における違約損失準備金制度と同様の制度を整備すること。

  •  システムの容量等の安全性・確実性を確保するため、十分なチェックを定期的に行うこと。

□ 過去6ヶ月において、上記の比率が、個別銘柄いずれかについて20%以上、かつ、そのPTSで取り扱う銘柄全体について10%以上となった場合には、取引所金融商品市場開設の免許の取得を行うこと。

なお、金融庁においては、これらの比率を月ごとに確認するとしています。

この他、取引所金融商品市場又は店頭市場に上場されている株券又は新株予約権付社債券を対象とするPTS、それ以外のPTSのどちらについても、取引量の拡大等に対応して、公益又は投資家保護のため必要があるときは、その限度において、新たな基準を設けることがあるとしています。

以上が、PTSの認可条件の主な内容です。

3.PTSの指針:認可の審査、監督上の対応 

PTS業務の範囲を拡充することにより、従来の伝統的な証券業においては予想されなかった新たな形態の証券業の展開が予想されます。このため、投資家保護の観点から、こうした新たな形態のPTS業務に対する認可の審査及び監督上の対応として、次に掲げる認可基準や定期報告等について、内閣府令や事務ガイドラインの改正により所要の見直しが行われました。

@ 取引量についての月次報告
PTSを営む証券会社は、有価証券の種類別及び銘柄別の月間の取引量を翌月20日までに金融庁へ報告しなければなりません。

A 内部管理体制を充実
PTS業務に係る内部管理の体制については、

  • PTS業務を管理する責任者が証券業務の経験を原則として5年以上有する者であり、PTS業務を行う部署が業務の遂行に必要な組織及び人員配置となっていること
  • PTS業務において顧客の本人確認を行う方法が確立していること
  • PTS業務においてインサイダー取引等の取引の公正を害する売買等を排除する方法及び体制が確立していること
  • PTS業務に関し、証券取引法等の法令及び諸規則に則った社内規則が整備されていること
といった事項が整備されていることに留意するものとされています。

B 売買価格の決定方法を含めた取引ルールの顧客への十分な説明義務
PTS業務に係る顧客への説明に当たっては、売買価格の決定方法をはじめ、注文から約定及び決済に至るまでの取引ルール、決済不履行の場合の取扱い及び提示された価格による約定可能性について、事前に十分な説明を行うことのできる体制が整備されていることに留意するものとされています。

C システム容量等の安全性・確実性の確保
PTS業務に係るシステムの容量等の安全性・確実性の確保については、

  •  将来の注文、約定等の件数を合理的に見込み、それに見合ったシステムの容量を確保すること
  •  その見込みに基づいて、十分なテストを実施すること
  •  システムの容量の超過や障害等について、その発生を防止し、かつ、早期に発見するための監視手法及びその体制が確立されていること
  •  システムの異常発生時における対処方法(顧客への説明・連絡方法)及びその体制が確立されていること
  •  システムが二重化(バック・アップ)されていること
  •  上記事項について、第三者(外部機関)の評価を受け、システムの容量等の安全性・確実性が確認されていることが整備されていることに留意するものとされています。

D 取引情報の機密保持のための予防措置
PTS業務に係る顧客の取引情報の機密の保持について、

  •  PTS業務部門とその他の部門とで、業務に従事する者を明確にすること
  •  PTS業務に従事する者がその他の業務に関する情報を利用してPTS業務を行い、又はその他の業務に従事する者がPTS業務に関する情報を利用してその他の業務を行うことが禁止されていること
  •  顧客の取引情報について、外部に漏洩しない措置が的確に講じられていること
  •  上記方策について、社内規則が整備されていること
といった事項を含む十分な方策が講じられていることに留意するものとされています。

例えば、PTSに入ってきた注文がその証券会社のディーリング部門を経由している場合、顧客の注文内容を見て、金融商品取引所の価格の方がその顧客にとって有利であることを知りながら、その証券会社の自己ポジション又は他の顧客の注文を意図的に付け合わせるということが可能となります。PTS業務に係る顧客の取引情報について、証券会社において適切な隔壁を設けることで、取引の公正性を害する行為が発生する余地をできるだけ排除しようとするものです。

(更新:06/09/2009 17:02:46)


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