平成10年12月1日、フリー・フェア・グローバルの3つを旗印に掲げた、いわゆる日本版ビッグバンを法令において具体化した「金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律」(平成10年法律第107号。以下「金融システム改革法」といいます。)が施行され、証券法制の中心をなす証券取引法(以下「証取法」といいます。)も大幅に改正されました。
この金融システム改革法においては、それまで証券取引所に上場されている株式の売買に課せられていた取引所集中義務が撤廃されました。つまり、証券取引所上場株式を証券取引所外で売買することが可能となったわけです。これとともに、市場間競争により投資家の利便性が向上されることを目的として、証券業を定義した証取法第2条第8項に私設取引システム(PTS:Proprietary Trading System)の規定が追加されました。すなわち、証券業の一つとしてPTSが認められることとなったわけです。
旧証取法第2条第8項第7号(金商法第2条第8項第10号)の規定によれば、私設取引システムとは、「有価証券の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理であつて、電子情報処理組織を使用して、同時に多数の者を一方の当事者又は各当事者として次に掲げる売買価格の決定方法又はこれに類似する方法により行うもの」とされています。
証券会社が証券業の一環としてPTSを行うに当たり、それまで電話とか対面で約定を成立させていたものが飛躍的に進歩し、集団的、組織的に高い約定成立能力を持った証券取引システムが現れるのではないかと予測されていました。
米国では私設取引システムのことをATS(Alternative Trading System)といいますが、その当時、すでに米国ではATSもしくはECN(Electronic
Communications Network:電子証券取引ネットワーク)が稼動しており、ものによっては相当程度の注文を集め始めていました。それを踏まえ我が国におけるそういう未知の世界のPTSについて、投資者保護の観点から最小限の規制をかけておくべきではないかというのが平成9年当時の証券取引審議会での論議でした。こうしたことから、PTSについて認可制が導入されたのです。
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