「私設取引システム(PTS)開設等に係る指針について」コメントの概要とコメントに対する考え方

(金融庁公表:平成12年11月16日)

コメントの概要

コメントに対する考え方

[全般]

 行政の優先すべきテーマは「公正な取引の確保」や「投資者保護」にあるのは言うまでもないが、指針にあるように、売買価格の決定方法の概念を広げる一方、価格情報等の外部公表や取引シェアに基づく数量基準の導入やPTS業務の認可基準の遵守、定期報告等の義務といった最低限のルールを定めた上で、そのシステム等の内容に応じて、より厳格な規制(条件)をかける形がよいのではないか。
 今回の指針においては、PTS業務における売買価格の決定方法を拡充する一方で、価格情報等の外部公表や取引高シェアに基づく数量基準の導入等を認可の基準とした上で、こうしたルールに基づいて、PTS業務を行う証券会社に対する検査・監督を行うことを通じ、ご指摘のような「公正な取引の確保」等に努めることとしたい。
 なお、本ガイドラインにおいては、「公益又は投資者保護のため必要があるときは、その限度において新たに条件を付すことがある」としている。
 PTSは証券会社であることが前提となっているが、自己が売買の相手方とならず、また決済にも関与しない場合で、純粋に顧客と証券会社の間の情報提供やコミュニケーションに過ぎないような場合には、その参加者が取引目的を有していたとしても、これを証券会社若しくはPTSと位置付けることは、ITを活用した市場の活性化の観点からも不適切なのではないか。
 複数の証券会社等の気配を一覧性のある形で表示し(気配の競合)、専用情報端末の配布や注文や交渉のためのリンク等の設定を始めとする取引条件に係る合意手段まで提供しているような場合については、価格情報等の提供から注文・約定に至るまでの約定過程が全て当該システムを中心に完結することとなる。
 従って、こうしたシステムについては、投資者保護や取引の公正性の確保の観点からも、単なる情報提供やコミュニケーションに止まらず、証券取引法における証券業(「媒介」)に該当し、かつPTS業務の認可を併せて要するものと考える。
 複数の証券会社の価格表示(「売買気配提示方式」)をPTSの要件としているが、機関投資家が売買取引高の多くを占める債券市場等においては、複数の証券会社からの価格表示を経て取引が成立することが一般的といえる。そのような債券取引市場の通常の取引執行システムの一部を電子情報処理組織で代替することが、取引所若しくはPTSと位置付けられることは、流動性の低い債券の流通市場を整備するといった観点からも不適切なのではないか。
 今回の指針は、電子取引市場の開設について、公正な取引の確保や投資者保護の観点から、取扱有価証券の性質を含め、その取引が行われる場の性質に応じたルールを課すことにより、有価証券取引の電子化に資する環境整備を行うこととしている。
 今後、こうした電子取引市場の開設の動きは、市場間競争を通じて市場の効率性を高め、流動性の低い有価証券の流通市場を整備することに向けて、大きな役割を果たすものと考える。

[売買価格の決定方法の拡充]

 取引所とPTSとの間を、売買価格の決定方法により定義付けようとするのは、ITを活用した取引技術が急速に発展する中で、もはや困難なのではないか。
 改正証券取引法においては、投資者保護の観点から、価格形成機能等の特性に着目し、例えば証券会社等が競売買といった高度な価格形成機能を有する方法を用いて取引を行うような場合には、「証券業」としてではなく、自主規制機能を有する「取引所」としての監督規制の下におかれるべきであるとの考え方をとっている。
 今回の指針は、こうした考え方に則しつつ、同法の解釈・運用として許される範囲内で、投資者保護の観点や取扱有価証券の性格・取引の実態等を考慮して対応したものであり、今後、PTS業務が有価証券市場全体の効率性の向上に貢献していくことが期待される。
 「成行注文」や「板寄せ」という手法が行われないシステムについて、なぜ「高度な価格形成機能」がないと言えるのか。
 成行注文等は売買を即時に成立させる機能を有し(即時性)、また相当程度に大きな流動性があって始めて可能な売買方法であることからすれば、これが認められていることは、その取引所有価証券市場が高度な価格形成機能を有していることを示していると考えられる。

[価格情報等の外部公表]

 PTSにおいては、流動性の提供の対価として、マーケットメイカーはスプレッドという利益を享受する反面、投資家の利益が損なわれる惧れがある。したがって、価格情報の集中・公表に関する市場インフラが整備されるべきである。
 今回の指針においては、価格情報に関する市場インフラを整備するため、株券等を対象とするPTS業務について、「当該システムの最良気配・取引価格等を他のPTSと比較可能な形で、リアルタイムで外部に公表する」こととしたところである。
 また、ご指摘のとおり、電子取引市場が今後発展していくにつれ、価格情報の集中・公表に関する市場インフラの整備がより一層重要性を増してくるものと考えている。
 価格情報等の外部公表について、「当該システムの最良気配・取引価格等を他のPTSと比較可能な形で、リアルタイムで外部に公表する形態」とはどのような形態を想定しているのか。
 日本証券業協会において、PTS業務を行う証券会社から情報提供を受け、各PTSの最良気配及び取引価格等を比較可能な形で協会のホームページに掲載することが検討されていると聞いている。
 価格情報等の外部公表について、他のPTSと比較可能な形での公表形態が整うまでの間において許容される、「外部から自由にアクセスすることが可能な方法」とはどのようなものを想定しているのか。
 他のPTSと比較可能な形での公表体制が整うまでには、ある程度時間を要することが予想される。
 従って、当面の間、PTS業務を行う各証券会社が各ホームページで公表するといったような「外部から自由にアクセスすることが可能な方法」による対応も認めることとしている。
 価格情報の集中・公表に関する市場インフラが整備されるまでの間においては、情報ベンダーを利用し、自社を含めた少なくとも2社以上が価格情報等を開示することを義務付ける等、価格等に関する情報の比較可能性を担保するべきではないか。また、こうした措置が難しければ、少なくともPTS業務を行う証券会社に対し、「当該PTSにおける約定価格は他の市場やPTSとの比較において、有利であることが保証されるものではない」旨の表示を義務付けるなど、投資家に対する配慮が必要なのではないか。
 価格情報の集中・公表に関する市場インフラが整備されるまでの対応については、当面の間の必要最小限の措置として、PTS業務を行う各証券会社が各ホームページで公表するといったような「外部から自由にアクセスすることが可能な方法」による対応を求めているが、この場合でも各PTSの価格情報を比較することはある程度可能と考えている。
 他方、各証券会社においては、PTS業務に係る顧客への説明に当たり、売買価格の決定方法等について事前に十分に説明することが求められている。今後の検査・監督を通じて、こうした説明が十分に尽くされているか否かについてチェックすることにより、ご指摘のような誤解に基づいた投資家の被害を回避することができるよう努めて参りたい。
 価格情報等の外部公表については、将来的には、「当該システムの最良気配・取引価格等を他のPTSと比較可能な形で、リアルタイムで外部に公表する形態となっていること」が必要とされているが、その場合にも過渡期における対応と同様、「外部から自由にアクセスすることが可能な」形態による公表が必要であり、その旨修正すべきではないか。
 ご指摘の通り、価格情報等について、他のPTSと比較可能な形で、リアルタイムで外部に公表できる体制を将来的に整える場合にも、「外部から自由にアクセス可能であること」が必要であると考えており、貴見のとおり修正することとした。
 仮に価格情報等が比較可能な形で公表できたとしても、全ての証券会社や投資家が全てのPTSに接続することは考えられず、むしろマーケットインパクトを回避することができなくなり、投資家をミスリードしかねないことから、価格情報等について他のPTSと比較可能な形での公表を義務付けることは必要ないのではないか。
 PTSを始めとする取引所外取引において、取引の公正性を担保するためには、その価格形成が公正かつ透明に行われる必要があり、そのためには価格情報等の報告・集中・公表が不可欠な要素となる。
 なお、米国においても、一定規模以上のATSについては、その最良気配等の価格情報を取引所や証券業協会へ提供することが義務付けられている。

[取引高シェアに基づく数量基準の導入]

 PTSが数量基準に抵触することで、取引所有価証券市場の免許を取得し市場に移行することは現実的ではなく、取引高シェアに基づく数量基準は導入すべきではないのではないか。
 自主規制機能を有しない証券会社の行うPTS業務において、新たな価格決定方法を追加すること等により一定の価格形成機能を認めた結果、取引参加者が増加し、その規模(取引高シェア)が一定以上に拡大した場合には、公正な取引確保の面で問題が生じる惧れが大きくなる。
 米国ATS規制においても、取引高シェアが一定以上に達したATSについてはより厳格な義務が課されている。
 これらに加え、市場間競争を公正なものとするためにも、取引高シェアが一定以上のPTS業務を行う証券会社には取引所等が実施している自主規制の一部を実施させる必要があるものと考える。
 PTSの規模(取引高シェア)がある程度の規模を有するに至ったような場合には、投資者保護の観点からも自主規制機能を持たせるべきであり、今回の指針において示された取引高シェアに基づく数量基準をより引き下げるべきではないか。
 今回の指針においては、PTS業務における売買価格の決定方法を拡充する一方で、その規模(取引高シェア)が一定の水準を超える場合には、それに基づいて一定の措置を講ずることを義務付けているが、こうした数量基準を著しく低く設定したような場合には、証券会社の創意工夫による新たな取引の場の提供を制約することとなり、有価証券取引の効率化や電子化を阻害し、多様な投資家の証券市場への参加を妨げることにもなり兼ねない。
 今回の当該具体的な数量基準については、上場株券についての取引所外取引の規模、各有価証券市場毎の規模、或いは諸外国の規制の内容等を総合的に勘案して定めたものであり、数量基準の引下げは適当でないと考える。
 十分な担保力を持たない証券会社の行うPTS業務においては、決済リスクが残存することから、売買の当事者の債務不履行の場合等に備えて、PTS側で準備金の預託等の一定の措置が必要なのではないか。
 ご指摘のとおり、十分な担保力を持たない証券会社の行うPTS業務においては、決済リスクが残存することから、今回の指針においても、PTS業務において取引参加者が増加しその規模が一定以上に拡大した場合には、決済履行の確実性を確保するため、証券取引所における違約損失準備金制度を始めとする、売買当事者の債務不履行の場合等に備えた何らかの措置(制度)を講ずることを義務付け、これを認可の条件とすることとしている。
 取引高に係る数量基準について、「過去6ヵ月において」取引高シェアが一定の水準を超えるような場合には、それに基づいて一定の措置を講ずることを義務付けているが、これについては日々の取引高を毎日チェックするという趣旨か。そうでないのであれば、それが読み取れる表現に修正すべき。
 取引高シェアに基づく数量基準については、当該PTS業務の取引高に関する報告書(証券会社に関する総理府令)を毎月提出頂くことにより、過去6ヵ月間の一日平均売買代金を月次で確認することを予定しており、誤解を招くことのないように、貴見のとおり修正することとした。

[PTS等に該当する基準]

 「取引所有価証券市場等に売買の取次をし、又は他の単一の証券会社に有価証券の売買の取次を行うシステムについては、PTSに該当しない」とあるが、取引所となる余地があるか否かについてその取扱が不分明であるため、「PTS及び取引所有価証券市場等に該当しないものとする」と修文すべき。
 PTSに該当しないことをもって取引所有価証券市場等に該当しないとは必ずしも限らないことから、貴見のとおり、「PTS及び取引所有価証券市場等に該当しないものとする」と修正することとした。
 「顧客との間で有価証券の売買を行う自己対当売買のシステムであっても、多数の注文による有価証券の需給を集約した提示気配に基づき売買を成立させていくもの」については、「PTS又は取引所有価証券市場等に該当する場合がある」とされているが、実際にどのようなものを想定しているのか、具体的な例を示して欲しい。
 顧客との間で有価証券の売買を行う自己対当売買のシステムであっても、複数の注文をリーブ(留保)すること等により一定の需給を反映するなど、実態として注文の付け合わせ等が行われているような場合には、PTS若しくは取引所に該当する場合があることを示している。
 株式や金融情報などを提供している証券会社や情報ベンダーについては、どのような業務を行えば,証券業の登録やPTS業務の認可が必要ということになるのか。
 複数の証券会社等が提示している気配に一覧性があり(気配の競合)、専用情報端末の配布や注文・交渉のためのリンク等の設定を始めとする取引条件に係る合意手段が提供されている場合には、証券取引法における証券業(「媒介」)に該当し、かつPTS業務の認可を併せて要するものと考える。

[顧客への説明義務]

 「提示された価格による約定可能性」を顧客に説明することが求められているが、どのように顧客に説明することが求められているのか、具体的な例をお示し願いたい。
 例えば、情報専用端末やインターネット等、取引参加者が使用する通信手段によって、その約定に至るまでに要する時間等が異なり、その結果提示された気配による約定可能性に顧客毎に差異が生じ得る点等について、事前に十分に説明しておく必要があるものと考える。

[システム容量等の安全性・確実性の確保]

 システムの安全性等について、「第三者(外部機関)の評価」を求めているが、どのようなものを想定しているのか。
 「第三者(外部機関)の評価」とは、PTS業務を行う証券会社以外の者による客観的かつ適正な評価を指しており、こうした取組により取引の場としての当該PTS業務に係るシステムの安全性・確実性が確保されていくものと期待している。例えば、監査法人等によるシステム監査等が含まれる。
 システム容量等の安全性・確実性の確保について、「第三者(外部機関)の評価を受けていること」とあるが、これについては、「第三者(外部機関)の評価を受け、システムの安全性・確実性が確認されていること」に修文すべき。
 第三者(外部機関)の評価を受けることを認可基準とすることの趣旨は、システムの容量等の安全性・確実性が十分に確保されるためであることから、誤解を招くことのないよう、貴見のとおり修正することとした。
 PTS業務を行う証券会社のシステムについては、第三者による外部監査が必要であるのに対し、PTS認可を受けていない証券会社のシステムについて監査が必要でないというのは何故か。オンラインブローカーを始めとする証券会社の内部システム全てについて、何らかの形でシステムの安全性の確保(外部監査等)が必要なのではないか。
 貴見のとおり、オンライン証券会社の場合についても、通常の証券業を行う範囲で必要と思われるシステムの安全性・確実性を確保する必要があるため、今後とも検査・監督を通じてその確保に努めて参ることとしたい。

[取引情報の機密保持のための予防措置]

 取引情報の機密保持のための予防措置については、営業員やトレーダーなど対顧客業務に従事する者についても「証券業のうちPTS業務に係る対顧客業務に従事する者」と、「それ以外のブローカー業務(証券業務)に係る対顧客業務に従事する者」を分ける必要が生じるなど不都合が多いことから、「当該業務部門とその他の部門で、業務に従事する者を明確に区分すること」なる規定を削除すべきではないか。
 PTS業務を行う証券会社は、同時にブローカーディーラーであるため、併せて通常の証券業(売買・取次)を営んでいるケースがあり得る。
 従って、当該証券会社において、取引参加者の取引に関する情報について守秘義務を厳守するとともに、それらの情報を他の業務に利用することがないようPTS部門とその他の部門の従業員を明確に区別するなど、社内規則の整備を含めた一定の予防措置を講じることを義務付け、PTS業務の認可基準とすることとした。
 取引情報の機密保持のための予防措置については非常に重要であるので、証券会社がこれらを守っているか否かについての検証・チェック手段を投資家にも与えてもらいたい。
 貴見のとおり、取引情報の機密保持のための予防措置が十分講じられているか否かについては、顧客注文の取扱の観点からも非常に重要であり、今後ともPTS業務を行う証券会社に対する検査・監督を通じて、十分に留意していくこととしたい。